鶴見大学歯学部
―有床義歯補綴学講座―

       Department of Removable Prosthodontics
               Tsurumi University  School of Dental Medicine

No5


With The Department
No.5 Winter

February, 2011


【ご挨拶】
昨年,歯学部は創立40周年を迎え,12月12日に「鶴見大学歯学部の創造する未来!Art, Science,Humanity」をテーマに記念式典・祝宴を催しました.当日は“Home coming day”として,たくさんの同窓の先生方にもお集まりいただきました.歯科補綴学第一講座も歯学部の創設と同じく1970年に誕生していますので,ちょうど40周年を迎えたことになります.40歳と言えば論語でいう「不惑」であり,孔子は70歳を過ぎた頃,自らの生涯を振り返り「40歳で,もう惑わなかった」と断言しています.
当講座もふたつの講座に分かれてはまたひとつに統合し,幾多の苦労を重ね,紆余曲折を経て大きく成長してきました.講座の沿革を繙いてみますと,尾花教授,細井教授の足跡に改めて深甚なる敬意を抱くと同時に,教育,臨床,研究のすべてに独創的な業績を残されていることに驚きを禁じ得ません.現在,私どもが継続させていただいている教育,臨床,研究も,おふたりの先生方が蒔かれた種が結実したものに他なりません.
一方で,歯科界を取り巻く非常に厳しい環境の中で本学歯学部も危機的状況に追い込まれています.本年度も入学志願者の激減は必至であり,入学定員を大きく下回ることになりそうです.したがって,歯学部も現状維持は許されず,改革の断行を義務付けられております.その中で,講座も単なる業務の継承,すなわち蒔かれた種を育てていくだけでは許されなくなりました.伝統に胡座をかくことなく,イノベーティブな挑戦を失敗を恐れず敢えて遂行することが必要なはずです.立ちはだかる苦難にも価値を見いだし,貴重な試練として受け止めることにより自身が成長を図り,目の前の苦難をブレイクスルーしたいと思います.
実は第一講座も開講以来の最大の危機を迎えているのかもしれません.歯学部の掲げる人員案は当講座の助教以上の教員数を5年前の1/2に削減することを要求しています.しかし,逆境に怯むことなくブレイクスルー思考をもって,医局員の力を結集し第一講座をさらに発展させていきたいと決意を新たにしています.何卒倍旧のご指導,ご鞭撻をお願い申し上げます.
40年を経た今日,歯学部は理念でもある「良き歯科医師の育成」を,講座は「良き補綴医の育成」を最優先課題として,何も惑うことなく全力を傾注する所存です.
大久保力廣
【近況報告】
・第42回全日本歯科学生総合体育大会は徳島大学歯学部の事務主管により開催されました.鶴見大学は健闘の結果,総合7位でした.
・平成22年度一日体験入学が開催され三浦先生が補綴の体験実習を担当し進学希望者から好評でした.
・11月1日付けで九州歯科大学から河原 博先生が歯科麻酔学講座の教授にご就任されました.
・12月12日に鶴見大学歯学部開設40周年記念パネルディスカッション,式典,祝宴が鶴見大学記念館ホール,大学食堂で行われました.
・今年1月27,28日(いずれか1日)に鶴見大学歯学部のI期入学試験が行われました.U期試験は3月2日に行われます.
・第104回歯科医師国家試験が2月5・6日に行われました.

では平成21年度下半期の講座の主な動向をお知らせします.
・第8回 SIPAFが9月24日, 25日に新保秀仁準備委員長のもと「有床義歯の生理学的構築」をメインテーマに開催されました.
・大久保力廣教授,米山喜一先生が永年の功績を称えられ永年勤続者の表彰を受けました.
・本年度,大学院を修了するのは2名の先生で,学位論文を提出しました.
岡野大輔:歯冠補綴用ハイブリッド型コンポジットレジン歯と各種金属歯の二体摩耗試験による摩耗   特性
  岡本直子:Effect of occlusion support by implant prostheses on brain function
・助教の土田富士夫先生が12月31日付で退職されました.
・学部助手の新保秀仁先生がH23年1月1日付で助教に昇任しました.




第8回SIPAFより

【学会発表】
1)88th General Session and Exhibition of the IADR (BARCELONA SPAIN 2010.July.14-17)
SATO M et al 展示「Removable effect of denture cleansers on Candida biofilm in vitro」
SHIMPO H et al 展示「Bonding strength of PMMA resin to thermoplastic denture base resin」
OSADA H et al 展示「Retentive force of thermoplastic resin clasp with variable-thickness arms」
SATO Y et al 展示「Fitness accuracy of Akers clasps fabricated from CAD/CAM patterns」
MURAISHI E et al 展示「Retentive forces of repaired Akers clasps using laser welding」
MOROKUMA M et al 展示「Relationship between Emotions and Brain Function after Chewing  withDenture」
MATSUDA R et al 展示「Evaluation of Brain Activity during Splint Wearing」
YONEYAMA Y et al 展示「Relationship between Mastication and Brain Function of Partial DentureWearers」
ISHIKAWA Y et al 展示「Effectiveness of modified thermoforming occlusal splint for string players」

2)8th S.I.P.A.F.(鶴見,2010.9.25)
   Sato Y 講演「Complete denture construction using Piezography and FBI Technique」
   Shimpo H 講演「Implant location for mandibular overdentures by means of Piezography」
   
3)第40回(社)日本口腔インプラント学会学術大会(札幌,2010.9.17-19)
            鈴木恭典 ほか 展示「機能的咬合印象法およびFGPテクニックを用いたインプラント固定制補綴装      置            の製作」
佐藤 薪 ほか 口演「下顎両側遊離端欠損におけるインプラント後方支持の効果−義歯床形態の相違が負担圧配分に及ぼす影響について−」
4)The 6th Congress of the Asian Academy of Osseointegration (Seoul, Korea, 2010.11.13)
Suzuki Y et al 口演「Development of stress-breaking ball attachment for implant overdentures」
Kono K et al 展示「Pressure distribution of implant-supported removable partial dentures with newstress-breaking ball attachment」
   Muraishi E et al 展示「Retentive forces of new stress-breaking ball attachment」

5)日本咀嚼学会,第21回学術大会(東京,2010,10,2−3)
西山雄一郎ほか 口演「下顎位および顎機能の偏りが身体重心動揺に及ぼす影響 第2報 咀嚼の側性による身体重心動揺と足圧の左右差」

6)第58回国際歯科研究学会日本支部【JADR】学術大会(福岡,2010,11,20−21)
西山雄一郎ほか 展示「Effect of foot position and jaw function on body sway」

7)日本補綴歯科学会西関東支部学術大会(山梨,2010.11.28)
  富永真由美 ほか 口演「咀嚼の側性と咬合力バランスの相関について」
  岡野大輔 ほか 口演「ハイブリット型コンポジットレジンの耐摩耗性に関する研究」
  廣田正嗣 ほか 口演「ノンクラスプデンチャーにおけるレストの有無が義歯床下粘膜の負担圧分に
及ぼす影響」
  北原弘子 ほか 口演「ピエゾグラフィーとFBIテクニックを用いた機能的全部床義歯製作」
           西村伸明 ほか 口演「今の全部床義歯に満足していますか?−術者も患者も満足度がさらに向上する      る            新術式の提案−」
  大久保力廣 講演「部分床義歯設計のすすめ−設計原則を再考する−」
  阿部 寛 講演「部分床義歯設計のすすめ−すれ違い咬合の意味するもの−」

8)鶴見大学歯学会第72回例会
  幕内俊介ほか 口演 「マウス胎仔の舌発生過程におけるmiRNAの発現」

9)その他
大久保 力廣 
講演「デンチャーパラダイム2010」(神奈川県南区,磯子区,港南区 3区合同学術会議,神奈川県歯科医師会館 2010,7.3)
講演「パーシャルデンチャーによる難症例への対応」(鶴見大学歯学部同窓会兵庫県支部,兵庫県歯科医師会館 2010,8.1)
シンポジウム「『天然歯の保存を考える−インプラントは天然歯を超えられるか−』パーシャルデンチャーの天然歯への有用性」(日本口腔インプラント学会関東甲信越支部学術シンポジウム,東京フォーラム,2010,8.29)
講演「理想的義歯を求めて」(トクヤマ研究所,つくば市,2010,8.30)
特別講義「部分床義歯材料」(福岡歯科大学,2010,10.5)
講演「Piezographyを用いた生理的義歯製作」(長崎大学歯学部,長崎市,2010,10.15)
講演「Piezography入門」(鶴見大学歯学部同窓会九州支部,嬉野市,2010,10.16)
三浦 英司
講演「『有床義歯って?』」(神奈川県社会保険支払基金職員研修会,神奈川県社会保険支払基金,2010,10,7)


【論文発表】
1)Ohkubo C et al.
  「Does the presence of antagonist remaining teeth affect implant overdenture
Success?  A systematic review」
【J Oral Rehabil 37(4):306−312,2010】
  大久保力廣
  「ポリアミド系樹脂製ノンクラスプデンチャーの現在 ―欠損補綴の1選択肢となり得
るか」【日本歯科評論70(10):51-58.2010】
2)鈴木清貴
 「アメリカの歯学部補綴教育1 −タフツ大学歯学部における講義を中心に−」
  【歯界展望Vol.115 No.6:1116-1121.2010】
 「アメリカの歯学部補綴教育2 −タフツ大学歯学部における模型実習,臨床実習
  を中心に−」【歯界展望Vol.116 No.1:144-150.2010】
3)Ishikawa C et al
 「Investigation of trends and characteristics in patients with obstructive sleepapnea」
 【J Indian Prosthodontic Society  Vol 10 (1)57-63.2010】
4)西山 雄一郎
 (分担執筆)著書「こんな事故が起こったら ポッケトブック トラブルVSリカバリ
  −:クラスプの支台歯が崩壊した」【株式会社デンタルダイヤモンド社,2010.9.1】
5)新保 秀仁
(分担執筆)著書「こんな事故が起こったら ポッケトブック トラブルVSリカバリ
  −:義歯床下粘膜に潰瘍ができて痛い」【株式会社デンタルダイヤモンド社,2010.9.1】
6)諸熊 正和
(分担執筆)著書「こんな事故が起こったら ポッケトブック トラブルVSリカバリ
  −:義歯がたびたび破損する」【株式会社デンタルダイヤモンド社,2010.9.1】  

【Message from inside】
 現在当教室は大学院生を含め若い医局員が多く,活気に溢れています.国際学会への参加や開催など,以前は考えられなかった環境にあります.若いうちに,このような経験を積めるのは実に羨ましい限りです.先日,センター試験の試験監督をやらせていただきました.私が高校生の時分には,センター試験どころか共通一次試験もありませんでした.現在,歯型彫刻実習を担当させていただいておりますが,3年生に行っていたこの実習を来年度からは1年生に行うことになりました.時代は変遷しています.若いうちにもっと勉強しておくんだったと反省しながら,もう少しの間,頑張りたいと思っています.
 

昨年秋に開催された磁気歯科学会の名古屋での写真です.右から中央技工室の三山先生,阿部先生,私,中央技工室の前田先生です
さて,補綴学会の広報・編集委員を担当させていただいている関係で,この場をお借りして,補綴学会のホームページについて紹介させていただきます.ホームページはご覧いただけているでしょうか?「電子ジャーナル」には,支部学術大会抄録集などが格納されているオンラインアーティクルと依頼論文が入っています.依頼論文は,各学術大会等で皆様に有用と思われる内容を,ご講演者に執筆いただいたもので,学会誌上では図表は白黒となっていますが,Web上ではカラー表示です.文字の大きさも変更可能なため,さらに読みやすいのではないかと思います.また「学術雑誌」には,日本補綴歯科学会誌,日本補綴歯科学会雑誌,日本補綴歯科學會々誌が登載されています.これらは論文のダウンロードが可能なばかりでなく,著者やキーワードなどによる全文検索も可能なため,関連論文を容易に探し出すことが出来ます.現在最新号のみIDとパスワードが必要となっております.このIDとパスワードは,補綴学会会員の皆様には学会よりご通知申し上げておりますが,おわかりにならない場合は学会事務局までお問い合わせ下さい.学術大会開催のお知らせや論文の投稿,投稿に必要な投稿規定の掲載など,今やホームページは情報の発信源として必要不可欠なものとなっています.是非ご活用いただきたいと存じます.
                                       高山慈子






本年1月より助教を拝命致しました新保秀仁と申します.
入学者数激減という大学の厳しい現実を目のあたりにする変革期の中,専任職員として任命して頂けたことを,嬉しく思うと同時に身の引き締まる思いです.未熟なことが多く,諸先生方にご迷惑をおかけすると思いますが,大久保教授から任命された第一期として歯科補綴学第一講座そして鶴見大学の発展のため力の限りを尽くす所存ですので,さらなるご指導のほど宜しくお願い申し上げます.
新保秀仁
私のような可もなく不可もないような、居る(要る?)のか居ない(要らない?)のか分からない新人を指導していただきありがとうございました。来年度からは専科生としてお世話になります。今後もよろしくお願い致します.                                     鏑木就人
補綴科に入局し,右も左もわからなかった僕に対し,優しく手を差し伸べてくれた諸先生方,感動して涙がちょちょギレてしまいそうでした.これからもよろしくお願いします.
鈴木達也
補綴科に身を投じ早1年が経ちました.治療,技工,飲みで夜遅くまで付き合って頂いた先生方,感激して涙がちょちょギレてしまいそうでした.これからもよろしくお願いします.ヒ〜ハ〜!!
北野展久
補綴科に潜入し,早10ヶ月が経ちました.いまだにだまされ続けてくださっている先生方,感謝で涙がちょちょギレてしまいそうでした.これからもよろしくお願いします.ヒ〜ハ〜!!
小池宏秋
先生方がとても面白く,また優しく教えてくださるのでここまであっという間でした.4月からは院生となりますがこれからもご指導の程,よろしくお願いします.
岡山章太郎





1年間,こんな微妙な新人に,一から百まで手とり足とり指導してくださいまして,涙が止まりません><.これからもヨドバシカメラ(新宿西口店)をよろしくお願いします.
川嶋一誠
毎回,失敗ばかりの技工の日々ですが,一歩一歩前に進んでゆきたいと思います.全ての先生が温かく見守り,ご指導してくださるお陰でわずかに成長したような気がします.これからもよろしくお願い致します.                  
石川朱見
ア…愛されキャラの有我ちゃん☆
リ…リアルに補綴1の食いしん坊!!
ガ…がってん技工も治療も頑張るよ★
有我朋子
キ…決めごとしっかり守ります☆
タ…楽しく技工も治療もがんばります☆
ハ…ハラハラすることあるけれど
ラ…ラララ笑顔で乗り切ります(^−^)v     
北原弘子
【今後の予定】
第90回 IADR(サンディエゴ 2011.3.16-19)
第2回 日本歯科CAD/CAM学会学術大会 (東京 2011.4.2-3)
第120回 日本補綴歯科学会学術大会 (広島 2011.5.20-22)
第57回 日本歯科理工学会学術大会 (Seoul 2011.5.27-29)



以上,簡単に教室の現状と予定をお知らせしました。
先生方の一層のご活躍をお祈り申し上げます.
     ニュースレター担当

鈴木恭典,高橋正樹,三浦英司

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